クマの緊急銃猟に苦情456件、舞鶴市長が怒った理由

クマの緊急銃猟に苦情456件、舞鶴市長が怒った理由

クマの緊急銃猟のあと、市役所に苦情が殺到したらしい。そんな記事が、10月9日のYahoo!ニュースのランキングに入っていました。舞鶴市の市長が「とにかく怒っています」と話した、という内容です。

クマを撃った市が怒られるって、どういうことなんでしょう。気になったので、読売テレビの記事と環境省の資料、法律の条文を順番に開いて確かめてみました。写真はすべてイメージ写真で、事件の写真ではありません。

山の登山道にあるクマ注意の看板(写真: KKPCW / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)
山の登山道にあるクマ注意の看板(写真: KKPCW / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)

まず事実確認。舞鶴市で何があった?

読売テレビによると、9月3日、京都府舞鶴市でクマの親子が民家に居座りました。市は警察などと協議して、住民の安全を最優先に緊急銃猟を実施したそうです。京都府で初めてのことで、人的被害はなかったと伝えています。

でも、そのあとが大変でした。9月16日までに、電話やメールなどあわせて456件の問い合わせが市に届いたそうです。鴨田市長は「9割が誹謗中傷であるとか、緊急銃猟を実施したこと、そのものに対する経過を問うような内容でした」と話しています。

舞鶴市の緊急銃猟とその後(読売テレビの報道を読んで自作した表)
舞鶴市の緊急銃猟とその後(読売テレビの報道を読んで自作した表)

音声も公開されていて、「死んでくれ」といった脅迫めいたものも含まれていた、と記事にあります。ここでは中身を繰り返しませんが、「山に帰すことはできなかったのか」といった、ごく普通の疑問も届いたそうです。

舞鶴市役所(写真: Bakkai / CC BY 3.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)
舞鶴市役所(写真: Bakkai / CC BY 3.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)

緊急銃猟って、そもそも何?

ここで「緊急銃猟」を整理しておきます。鳥獣保護管理法の第34条の2に決まりがあって、市町村長が、危険な鳥獣が住居や広場などに入ってきた、またはそのおそれが大きいと把握したときに使える仕組みです。

条件は全部そろう必要があります。人の生命や身体への危害を防ぐ措置を緊急にとる必要があること、銃を使う以外では的確で素早い捕獲が難しいこと、そして通行禁止などの措置で、人に弾丸が届くおそれがないと認められることです。判断するのは市町村長で、職員が実施するか、職員以外に委託するかを選べます。

緊急銃猟ができる条件(条文を読んで自作した表)
緊急銃猟ができる条件(条文を読んで自作した表)

環境省の「緊急銃猟ガイドライン概要」(令和7年7月)には、委託したあとの発砲のタイミングは捕獲する人の知見に委ねる、とあります。ただ、緊急銃猟は市町村の責任のもとで行われるものだ、とも書いてありました。

環境省「緊急銃猟ガイドライン概要」。①発砲のタイミングなどは捕獲者の知見に委ねる ②物損などに備えて保険加入を推奨
環境省「緊急銃猟ガイドライン概要」。①発砲のタイミングなどは捕獲者の知見に委ねる ②物損などに備えて保険加入を推奨

同じ資料には、物が壊れたときに備えて保険に入ることを勧める、という記載もありました。人身事故は国家賠償法で対応する、とのことです。市長ひとりに判断も責任も集まる仕組みなんですね。

舞鶴の赤れんがパーク(写真: Asturio Cantabrio / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)
舞鶴の赤れんがパーク(写真: Asturio Cantabrio / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)

鴨田市長がSNSで言いたかったこと

読売テレビによると、市長は市の対応が「緊迫していた最中」に、「なぜ殺すのか」「開示請求するぞ」といった電話やメールが複数あって、市役所の本部と現場、報道との連絡に支障が出たとSNSに書きました。「動物愛護を否定しませんが、脅迫めいた問い合わせはやめて下さい」とも投稿したそうです。

どうしてSNSで発信したのかという質問には、こう答えたそうです。「どこの自治体も、本当に緊急銃猟をしなければならない場面の中で、同じように苦情が来てしまうんじゃないかと、正しい判断ができなくなってしまう可能性がある」。だから最終手段のときは、ためらわずに実施してほしい、というメッセージだと話していました。

日テレNEWS「【速報】京都・舞鶴市の住宅街にツキノワグマ2頭出没…京都府初となる緊急銃猟を実施」(YouTube)

私は、動物の命を大事に思う気持ちと、住民の安全を守る判断は、ぶつからないはずだと思います。ただ、電話で相手を傷つけるのは、また別の話ですよね。

カスハラはもう「対策が義務」になる

記事の後半は、カスハラの話でした。大阪市では、ひとりの男性が2023年5月から2026年6月まで、市立プールの設備の不具合をめぐって職員に説明や謝罪を求め続けたそうです。電話548回、面談93回で、あわせて641回。市は対応した職員の人件費約40万円の損害賠償を求める方針で、10月にも提訴する、と記事にありました。

読売テレビが紹介したカスハラの例(自作した表)
読売テレビが紹介したカスハラの例(自作した表)

小田急電鉄は、2026年4月から全70駅で駅係員がウェアラブルカメラをつけています。録音中だと分かるように点滅するそうで、2025年の同じ時期に16件あったカスハラが、カメラをつけている間は0件だったと伝えています。

厚生労働省のリーフレット。①令和8年10月1日からカスハラ対策が義務化 ②顧客等には施設の利用者なども含む
厚生労働省のリーフレット。①令和8年10月1日からカスハラ対策が義務化 ②顧客等には施設の利用者なども含む

厚生労働省のリーフレットには、令和8年10月1日からカスタマーハラスメント対策が事業主の義務になる、と大きく書かれていました。顧客等には、お客さんだけでなく、駅・空港・病院・公共施設などの利用者や、施設の近隣住民も含まれるそうです。電話やSNS上の言動も対象に入る、と注意書きがありました。

ただ、顧客等からの苦情のすべてがカスハラになるわけではない、とも書いてあります。言動の内容か、手段や態様が社会通念上許される範囲を超えているときが対象です。意見を伝えること自体はもちろん大事です。

遊歩道のクマ注意の看板(写真: KKPCW / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)
遊歩道のクマ注意の看板(写真: KKPCW / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)

市役所の職員は、住民の声を受け止める仕事です。それでも、脅しや人格を否定する言葉は別です。みなさんは、行政の判断に疑問を持ったとき、どんな方法で伝えるのがいいと思いますか?

参考にしたところ


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