盲導犬の入居拒否100件超、国が実態調査へ

盲導犬の入居拒否100件超、国が実態調査へ

「盲導犬と暮らしたいだけなのに、賃貸を100件以上断られた」。10月7日、そんな男性の話がニュースになっていました。読んで、盲導犬の入居拒否って法律的にはどうなんだろう、と思いました。ペット不可の部屋でも入れるのかな、とも。

気になったので、国が実態調査をするという報道と、身体障害者補助犬法の条文、厚生労働省のページを自分で開いて確かめてみました。

まず事実確認。報道で分かること

報道によると、埼玉県所沢市のアパートで盲導犬と暮らす男性(45歳)は、今のアパートにたどり着くまでに100件以上断られたそうです。理由は「ペットはだめ」「大家さんの許可が下りない」といったものだったと書かれていました。

貸す側は、部屋を汚されたり、ほかの住人が嫌がったりするのを心配している、という説明でした。国土交通省と厚生労働省は、年内にも実態調査を行って、改善につなげる予定だそうです。

東京・浅草駅のホームで待つ盲導犬と利用者(写真: Nesnad / CC BY 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)
東京・浅草駅のホームで待つ盲導犬と利用者(写真: Nesnad / CC BY 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)

民間の調査も出ていました。NPO法人の2026年の調査で、回答した25人のうち8人が入居を断られた経験があり、そのうち6人は法律ができたあとのことだったそうです。これは報道にある数字で、私は元の調査までは確認できていません。

法律にはどう書いてある?

e-Govで身体障害者補助犬法を開いてみました。補助犬は、盲導犬、介助犬、聴導犬の3つです。受け入れについては、場所によって決まりが違うみたいです。

場所ごとの決まり(条文をもとに自作)
場所ごとの決まり(条文をもとに自作)

国や自治体が管理する施設は、補助犬の同伴を拒んではならない、とあります(第7条)。電車やバスなどの公共交通も同じです(第8条)。飲食店やホテルのように、不特定多数の人が使う施設も、第9条で拒んではならないとされています。

同じ法律の第9条。①不特定かつ多数の者が利用する施設の管理者は、補助犬の同伴を拒んではならない(義務)
同じ法律の第9条。①不特定かつ多数の者が利用する施設の管理者は、補助犬の同伴を拒んではならない(義務)

ただし、ここには「やむを得ない理由がある場合は例外」という但し書きがあります。施設に著しい損害が出たり、ほかの利用者が著しい害を受けるおそれがあったりする場合、という書き方でした。

東京・北千住の駅前を歩く盲導犬たち(写真: Nesnad / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真、人物は加工)
東京・北千住の駅前を歩く盲導犬たち(写真: Nesnad / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真、人物は加工)

住まいだけ少し違う

気になるのは第11条です。民間の賃貸住宅など、住宅を管理する人は、補助犬の使用を拒まないよう「努めなければならない」と書かれています。つまり、義務ではなく努力義務です。

e-Gov法令検索「身体障害者補助犬法」第11条。①民間の住宅を管理する者は、補助犬の使用を拒まないよう努めなければならない
e-Gov法令検索「身体障害者補助犬法」第11条。①民間の住宅を管理する者は、補助犬の使用を拒まないよう努めなければならない

国や自治体が管理する住宅(公営住宅)は、第7条の対象なので義務になります。報道の「公営は義務、民間は努力義務」という説明は、条文とも合っているみたいです。ここは私が条文を読んで確認しました。

だから、民間の大家さんが断っても、すぐに法律違反とは言えないかもしれません。ただ、努力義務だから断っていい、という話でもないと思います。国が実態を調べるのも、そのためでしょうね。

愛知県の盲導犬訓練施設の建物(写真: Kyu3a / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)
愛知県の盲導犬訓練施設の建物(写真: Kyu3a / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、イメージ写真)

ペットとどう見分けるの?

貸す側の不安で大きいのは、「普通のペットと何が違うの?」だと思います。厚生労働省のページには、事業者向けの説明がありました。盲導犬は白か黄色のハーネス(胴輪)が目印で、介助犬と聴導犬は胴着などに表示をつけています。

使用者は認定証などを持っていて、犬の健康管理の記録も携帯しているそうです。補助犬かどうか確認したいときは、事業者が認定証の提示を求めてもいい、と書かれていました。「認定証を見せていただけますか」と聞くのは失礼にあたらない、という説明もありました。

厚生労働省「身体障害者補助犬の受け入れについて」。①盲導犬は白か黄色のハーネスが目印 ②事業者は認定証の提示を求められる
厚生労働省「身体障害者補助犬の受け入れについて」。①盲導犬は白か黄色のハーネスが目印 ②事業者は認定証の提示を求められる

逆に、決まった表示がない犬が「補助犬です」と言っても、事業者に受け入れの義務はない、ともあります。つまり、確認できる仕組みはあるということですね。

東京都が事業者向けに30秒の動画を出していたので、貼っておきます。短いので、受け入れる側の人も一度見ておくといいかもしれません。

東京都「知っていますか?補助犬同伴の受け入れ(事業者用・30秒ver.)」(YouTube)

厚生労働省の一覧では、令和8年4月現在の実働頭数は、盲導犬744頭、介助犬54頭、聴導犬51頭です。足すと849頭になります。この合計は私の計算ですが、報道にあった数字とも同じでした。

厚生労働省「身体障害者補助犬実働頭数」令和8年4月現在。①合計 ②盲導犬は744頭
厚生労働省「身体障害者補助犬実働頭数」令和8年4月現在。①合計 ②盲導犬は744頭
補助犬の実働頭数(厚生労働省の一覧をもとに自作)
補助犬の実働頭数(厚生労働省の一覧をもとに自作)

都道府県別に見ると、東京都の盲導犬が94頭で一番多く、次が神奈川県の57頭でした。一方で、盲導犬が3頭の県もあります。全国で見ても、849頭という数字は多くはないですよね。だからこそ、一頭ごとの暮らしがはっきり見えやすいのかもしれません。

もう一つ、私が気づいたことがあります。補助犬法の第25条には、苦情の申し出の仕組みがあります。身体障害者や施設の管理者は、その施設がある都道府県の知事に苦情を申し出ることができる、と書かれていました。第24条には、国民も補助犬の使用者に必要な協力をするよう努める、とあります。

まとめるとこうです。民間の賃貸住宅は努力義務で、断られるケースが起きています。国は年内にも実態を調べる予定です。調査の結果で、ルールの伝え方や運用が変わるかもしれません。あなたが大家さんだったら、認定証を確認したうえで、受け入れを考えますか?

参考にしたところ


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