ラーメン店倒産56件と41件、数字が違う理由|TDB・TSR

ラーメン店倒産56件と41件、数字が違う理由|TDB・TSR

ラーメン店倒産の数字が、見る場所で違います。

16日の「モーニングショー」で、長嶋一茂さんが「今月からラーメン店をやってるんです」と話したそうです。倒産が過去最多ペースだという話題への反応でした。

でも、この「過去最多」の数字は、56件だったり41件だったりします。どれが正しいのか、発表元の原文で確かめてみました。

まず事実確認:発表は2つある

1つ目は帝国データバンク(TDB)です。10月1日の発表で、2026年1-9月に発生した「ラーメン店」の倒産は56件でした。条件は負債1000万円以上、法的整理です。前年の年間件数・60件に迫る勢いだと書かれています。

帝国データバンクの発表 — ① 2026年1-9月は56件 ② 負債1000万円以上・法的整理が対象
帝国データバンクの発表 — ① 2026年1-9月は56件 ② 負債1000万円以上・法的整理が対象

見出しは「減少から一転、再び増加 過去最多ペース」です。2025年は4年ぶりに減少していたので、流れが変わったという書き方ですね。

ラーメン店などで見かける食券機(写真: MsSaraKelly / CC BY 2.0(ウィキメディア・コモンズ))
ラーメン店などで見かける食券機(写真: MsSaraKelly / CC BY 2.0(ウィキメディア・コモンズ))

2つ目は東京商工リサーチ(TSR)です。10月8日の発表で、2026年度上半期(4-9月)の「ラーメン店」の倒産は41件。前年同期比で46.4%増でした。この記事の見出しは「飲食業界ワースト」と、増加率の高さを前に出しています。

東京商工リサーチの発表 — ① 「ラーメン店」41件(前年同期比46.4%増) ② 「物価高」倒産は79件
東京商工リサーチの発表 — ① 「ラーメン店」41件(前年同期比46.4%増) ② 「物価高」倒産は79件

同じ記事に、飲食業全体の数字もあります。年度上半期の「飲食業」の倒産は514件で、上半期としては初の500件超だそうです。このうち「物価高」倒産は79件(前年同期比23.4%増)、「人手不足」倒産は41件(同57.6%増)でした。

ちなみに「人手不足」倒産も41件で、ラーメン店と同じ数字です。でもこれは偶然の一致で、別の集計なので注意してください。

なぜ数字が違うのか

理由はシンプルでした。見ている期間が違います。TDBは暦年の1-9月で、TSRは年度の上半期、つまり4-9月です。始まりの月が3か月ずれています。

千葉のラーメン店の外観(写真: Guilhem Vellut from Annecy, France / CC BY 2.0(ウィキメディア・コモンズ))。記事の件数とは関係ありません
千葉のラーメン店の外観(写真: Guilhem Vellut from Annecy, France / CC BY 2.0(ウィキメディア・コモンズ))。記事の件数とは関係ありません

集計元も違います。TDBは「ラーメン」メニューを提供している事業者を「ラーメン店」としています。TSRの記事には、ラーメン店だけの定義は個別に書かれていませんでした。定義が同じかどうかは、この記事だけではわからないです。

だから56件と41件を足したり、どちらかが間違いだと言ったりはできません。比べるなら、同じ会社の同じ期間の数字です。TDBなら去年の1-9月は46件で、56件はそれより多い、という見方になります。

反応:一茂さんの「ほっといてほしい」

スポニチの記事によると、一茂さんはテーマに強く反発しました。司会の羽鳥さんが「大丈夫か」という意味を込めたテーマだと説明すると、大丈夫かどうかは「余計なお世話」と返したそうです。

以前に出した寿司店は1年で倒産したものの、楽しかったと振り返っています。飲食店を続けるのは「男のロマン」だからだ、とも話していました。記事には具体的な件数や調査元は出ていません。

数字が違って見える理由を、記事から読み取れる範囲で整理した表
数字が違って見える理由を、記事から読み取れる範囲で整理した表

背景:中堅の店が目立つようになった

TDBの原文で気になったのは業歴です。2026年は業歴「10年以上」が36件、割合は64.3%でした。個人店や創業間もない店が多かった2024〜25年と比べて大きく上がり、件数では前年累計の25件を超えたと書かれています。

帝国データバンクの発表 — ① 業歴「10年以上」が36件・64.3% ② 前年累計25件を超えた
帝国データバンクの発表 — ① 業歴「10年以上」が36件・64.3% ② 前年累計25件を超えた

原因として挙げられているのは、原材料費や人件費の高騰を価格へ十分に転嫁できなかったことです。コロナ禍以降のラーメンブームで新規出店が相次ぎ、客の取り合いが激しくなったことも背景にあります。消費者が価格に敏感で、「千円の壁」を意識した値付けを迫られた面もあるそうです。

ラーメン店の看板(写真: Mr.ちゅらさん / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、人物は加工)
ラーメン店の看板(写真: Mr.ちゅらさん / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ)、人物は加工)

TSRの記事でも、飲食業は物価高や人手不足が深刻で、値上げが客離れにつながるので価格転嫁が難しいと書かれています。来年4月からの消費減税の影響を含め、小・零細規模の飲食業の動向が注目される、とのことです。

7月のTBSの報道でも、二郎系ラーメン店が高騰する仕入れ価格に「限界を超えている」と話していました。下の動画はそのときのものです。10月の数字ではなく、上半期の話だという点はご注意ください。

TBS NEWS DIG「“二郎系ラーメン”から見た物価高…上半期「ラーメン店」倒産最多に【news23】」(7月の報道)
大阪のラーメン(写真: Joli Rumi / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ))
大阪のラーメン(写真: Joli Rumi / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ))

ここは私の感想です。「過去最多」という言葉は便利ですが、どの集計での最多かを見ないと誤解しやすいと思いました。TDBは「過去最多ペース」とまだ途中の数字を使っています。TSRの記事で41件について「過去最多」と明記されているかというと、書かれていませんでした。

もう1つは、これが倒産の数字だという点です。TDBも書いているとおり、個人店の閉業は含まれていません。実際に店を閉めた数は、もっと多いのかもしれません。

飲食店のカウンター席(写真: kimubert / CC BY-SA 2.0(ウィキメディア・コモンズ))
飲食店のカウンター席(写真: kimubert / CC BY-SA 2.0(ウィキメディア・コモンズ))

近所のラーメン店、最近値上げしましたか? 私は「千円の壁」の話を聞くたびに、あの一杯の値段の裏側が気になってしまいます。

参考にしたところ


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