エスカレーター歩行禁止条例|埼玉県と名古屋市の2条例、罰則は

エスカレーター歩行禁止条例|埼玉県と名古屋市の2条例、罰則は

エスカレーター歩行禁止条例って、実際はどういう決まりなんでしょうか。10月12日に朝日新聞のwithnewsが、歩く人の声を集めたアンケート記事を出していて、気になりました。

「歩く側を空けるのがマナー」と思っていた人も多いはずです。私もそのひとりでした。そこで、埼玉県と名古屋市の条例を、公式ページで読んでみました。わかったことだけを整理します。

埼玉県の条例には何て書いてあった?

埼玉県の公式ページによると、「埼玉県エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」は、令和3年10月1日に施行されています。2026年10月1日で5年たったことになります。

利用者の義務は第5条です。「立ち止まった状態でエスカレーターを利用しなければならない」と書いてあります。管理者の義務は第6条で、利用者に立ち止まって利用すべきことを周知しなければならない、という内容です。

埼玉県の公式ページ「エスカレーターの安全利用について」— ①利用者の義務(第5条)②立ち止まった状態で利用しなければならない ③罰則規定はありません
埼玉県の公式ページ「エスカレーターの安全利用について」— ①利用者の義務(第5条)②立ち止まった状態で利用しなければならない ③罰則規定はありません

気になるのは、そのあとの一文です。県のページには「罰則規定はありません」と書いてありました。義務とは書いてあるけれど、守らなくても罰金を取られるわけではないんですね。

つまり、「歩いたら違反」ではあっても、罰則で取り締まる仕組みではないようです。これは私の読み方ですが、マナーを法律の言葉にした、という感じに近いと思います。

名古屋市にも同じ条例がある

条例は埼玉県だけではありません。地方自治研究機構の一覧には、名古屋市の条例も載っていました。令和5年3月23日に公布されて、令和5年10月1日に施行されています。

地方自治研究機構の条例一覧 — ①埼玉県(令和3年10月1日施行)②名古屋市(令和5年10月1日施行)
地方自治研究機構の条例一覧 — ①埼玉県(令和3年10月1日施行)②名古屋市(令和5年10月1日施行)
二つの条例を一覧ページから読んで自分で並べた表
二つの条例を一覧ページから読んで自分で並べた表

名古屋市の条例は、第8条で「利用者は、右側か左側かを問わず、エスカレーターの踏段上に立ち止まらなければならない」と決めているそうです。こちらも罰則規定は置いていないと書かれていました。

この一覧は、令和7年11月1日の時点で確認できる条例をまとめたものです。載っていたのは埼玉県と名古屋市の2つでした。そのあとに増えた自治体があるかどうかは、私は確認できていません。

もうひとつ、おもしろい一文がありました。一覧ページには、法律や政令などで、エスカレーターの利用方法を決めたものは確認できない、とあります。国の決まりではなく、自治体ごとの条例なんですね。

「両側に立つ」ほうがいい理由

埼玉県のページを読んで、いちばん意外だったのは、「片側空け」そのものに問題がある、という考え方です。

ページには、エスカレーターの利用者の中には、けがや障がいなどの事情で、右側の手すりにしかつかまれない人もいると書いてありました。右側を空けると、そういう人が手すりにつかまれなくなって、転倒などの事故につながるおそれがある、という説明です。

埼玉県の公式ページ — ①片側空けではなく、左右両側に立ち止まって利用しましょう
埼玉県の公式ページ — ①片側空けではなく、左右両側に立ち止まって利用しましょう

だから県は「左右両側に立ち止まろう!!」と呼びかけています。片側空けではなく、両側に立って利用しましょう、と書いてありました。急いでいる人への思いやりより、手すりにつかまれない人への思いやりを大切にしよう、というチラシも載っていました。

埼玉県公式チャンネル「エスカレーターでは左右両側に立ち止まろう!!」(県の公式動画、約16秒)

消費者庁が挙げた6つの注意

消費者庁の「みんなの消費安全ナビ」Vol.661も読みました。エスカレーターでの転倒・転落事故の情報が、消費者庁に寄せられているそうです。

新潟駅のエスカレーター(写真: ノボホショコロトソ / CC BY 4.0(ウィキメディア・コモンズ))
新潟駅のエスカレーター(写真: ノボホショコロトソ / CC BY 4.0(ウィキメディア・コモンズ))

事故の例も載っていました。たとえば、下りエスカレーターで人を追い抜こうとして足をふみはずして転落した2歳の子の例があります。リュックの紐がひっかかって転倒した5歳の子の例もありました。

注意のポイントは6つでした。立ち止まって利用すること。黄色い線の内側に立つこと。衣類や持ち物が隙間に巻き込まれないようにすること。手すりをしっかりつかむこと。

あとはベビーカーやカートや車いすなどはエレベーターを使うこと。それから、進行方向の表示を見て、まちがえて入らないこと、の2つです。

消費者庁「みんなの消費安全ナビ」Vol.661 — ①立ち止まって利用 ②黄色い線の内側に立つ ③手すりをしっかりつかむ
消費者庁「みんなの消費安全ナビ」Vol.661 — ①立ち止まって利用 ②黄色い線の内側に立つ ③手すりをしっかりつかむ

古い数字ですが、事故のデータも

地方自治研究機構のページには、古いデータも引用されていました。東京消防庁の管内では、2011年から2013年の3年間で、3,865人がエスカレーターでの事故で救急搬送されたそうです。

日本エレベーター協会の調査(第9回)では、2018年1月から2019年12月の2年間で、利用者災害が1,550件でした。場所は交通機関が734件、ショッピングセンターが353件です。原因は乗り方不良が805件で、いちばん多かったと書いてありました。

一覧ページが引用していた古い事故データを写した表(自作)
一覧ページが引用していた古い事故データを写した表(自作)

これは古い数字なので、今の件数ではありません。そこは気をつけてください。ただ、ページは、乗り方不良が原因の事故は以前より減っている傾向だと説明していました。キャンペーンの効果ではないか、と推測する書き方でした。

エスカレーターの手すりの入口にある注意ステッカー(写真: TheSquirrel / CC BY-SA 3.0(ウィキメディア・コモンズ))
エスカレーターの手すりの入口にある注意ステッカー(写真: TheSquirrel / CC BY-SA 3.0(ウィキメディア・コモンズ))

歩く人の声も、読んでみた

withnewsのアンケートには、歩く人の声もたくさんありました。東京都の80代の女性は、原則は歩かないで乗るべきだけれど、とても急いでいる時に空いている方を歩くのはやむを得ない、と答えています。

千葉県の40代の女性は、大きな駅で乗り換えるとき、長いエスカレーターを何基も乗り継ぐので、歩くか立つかで合計の時間が何分も違う、と書いていました。

一方で、東京都の30代の女性は、片側を歩いて通る人にぶつかられたことがあって、そのまま落ちたらと考えると怖い、と答えています。神奈川県の60代の男性は、上りは階段と比べて特段危険ではないと思う、という意見でした。

福島駅のエスカレーター(写真: Dquai / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ))
福島駅のエスカレーター(写真: Dquai / CC BY-SA 4.0(ウィキメディア・コモンズ))

このアンケートは、記事に載った一部の声です。全国の割合ではありません。ただ、「急いでいる」「並ぶのが嫌だ」「危険と感じない」という気持ちは、よくわかります。

私は、今回調べてみて、立ち止まるほうに少し気持ちが傾きました。理由は、手すりにつかまれない人がいるという点です。自分では気づいていませんでした。

みなさんは、エスカレーターで歩きますか? それとも立ち止まりますか? 急いでいるときは、どうしていますか?

参考にしたところ


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