白馬村の空き家が360万円で売れた 買ったのはオーストラリア人夫婦

白馬村の空き家が360万円で売れた 買ったのはオーストラリア人夫婦

長野県白馬村の空き家が、2万2000ドルで売れた。日本円にしておよそ360万円。

買ったのはオーストラリア人のロイド・エンボムさん夫婦。9月8日にBusiness Insider Japanが伝えた話だ。

地方の空き家(資料写真・山口県)
地方の空き家(資料写真・山口県)

360万円という数字の見え方

都心のマンションが1億円を超えるという話を毎日聞いていると、360万円で家が買えるというのはちょっと現実味がない。

ただ記事にはこうある。ほかの物件より安かったが、大規模な改修が必要だった、と。

つまり360万円は入口の値段で、そこから工事費が乗る。安く買えた分がそのまま得になるわけではない。空き家を買った人の話でいちばん多いのが、この「買ってからのほう」だ。

竹やぶに埋もれかけた空き家(資料写真)
竹やぶに埋もれかけた空き家(資料写真)

記事によると、改修には買った金額とほぼ同じか、それ以上かかる見込みだという。手数料をすべて入れると、支払いは410万円になった。

年の半分は日本、もう半分はタイやバリ

この夫婦の暮らし方が、値段より興味深かった。

2歳の娘と一緒に、1年の半分を日本で、残りの半分をタイやバリで過ごすつもりだという。定住でも旅行でもなく、その間にある感じだ。

白馬村の古民家を使った店(資料写真)
白馬村の古民家を使った店(資料写真)

この暮らし方だと、家に求めるものが変わってくる。年中住むわけではないので、駅から遠くてもいいし、買い物が不便でも耐えられる。

逆に日本の地方の空き家は、まさにそういう条件のものが多い。常時住むには不便だが、半年だけならむしろ悪くないという物件が、値段のつかないまま残っている。

なぜ白馬だったのか

白馬村はスキーの町として知られている。1998年の長野オリンピックでは、滑降やジャンプの会場になった場所でもある。

白馬のスキー場から見える北アルプス(イメージ)
白馬のスキー場から見える北アルプス(イメージ)

ここ数年、白馬にはオーストラリアをはじめとする海外からの客が増えている、という話はよく聞く。雪質を目当てに来て、そのまま滞在期間が延びていく人がいる。

南半球のオーストラリアは、日本の冬がちょうど夏にあたる。自国が夏のあいだに雪を滑りに来られるというのは、地味にかなり大きい条件だ。

JR白馬駅(イメージ)
JR白馬駅(イメージ)

ただ記事によると、夫婦が日本に来たのは今回でまだ2度目。何度も通って決めたわけではなく、かなり思い切った買い物だったようだ。

「空き家バンク」という仕組み

ちなみに白馬村には、村が運営する空き家・空き地バンクがある。空き家を手放したい人と、買いたい・借りたい人をつなぐ仕組みで、全国の多くの自治体が同じものを持っている。

ただ、この夫婦が使ったのはバンクではない。記事では、日本人の不動産エージェントを通して、1カ月前に売りに出たばかりの家を買っている。

村のバンクのページも見てみた。9月18日更新の一覧には「現在ご案内できる空き家・空き地はございません」とある。少なくともいま、村の窓口から同じような家を探すのはむずかしいということになる。

買ったあとにかかるもの

空き家を買うとき、本体価格以外にかかるものを並べておくと、だいたいこのあたりになる。

改修費(水回り・屋根・断熱)、登記や仲介の諸費用、固定資産税、そして雪国なら除雪。白馬は雪が多い土地なので、住んでいない期間の家の管理はけっこうな問題になる。

年の半分いない、というこの夫婦の暮らし方だと、残り半分をどうするのかという話は必ず出てくる。近所づきあいが実質的なインフラになる部分だ。

安く買えた、で終わらないのが空き家の難しさで、それでも買う人が出てきているというのが今回の話だと思う。

空き家が「売れる」ということ

空き家が増えているという話は、ずいぶん前から言われている。人が減って、家が余って、値段がつかなくなる。

ただ今回のような買われ方が出てくると、話が少し変わる。日本人にとって不便な立地が、別の暮らし方をする人には条件を満たしているということが起きるからだ。

白馬村から望む山並み
白馬村から望む山並み
白馬八方尾根(イメージ)
白馬八方尾根(イメージ)

もちろん、外国人が地方の家を買っていくことに複雑な気持ちになる人もいると思う。地価が上がって地元の人が住めなくなる、という話は世界中の観光地で起きている。

ただ、誰も買わないまま朽ちていく家と、改修されて年の半分だけ人が住む家。どちらがその集落にとってましなのかというと、簡単には答えが出ない気もする。

数字で確かめてみた

「空き家が余っている」という話を、総務省の住宅・土地統計調査(2023年)で見てみた。全国の空き家は900万2千戸で、空き家率は13.8%。どちらも過去最多・過去最高だ。

長野県はもっと高い。総住宅数104万戸のうち空き家が20万9千戸で、空き家率は20.1%。5軒に1軒が空いている計算になる。

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」、白馬村「人口の推移」などをもとに作成
項目 数字 出典
購入価格 360万円(手数料込みで410万円) Business Insider Japan
改修費の見込み 購入額とほぼ同じか、それ以上 Business Insider Japan
全国の空き家率(2023年) 13.8%(900万2千戸) 総務省
長野県の空き家率(2023年) 20.1%(20万9千戸) 総務省
白馬村の人口 2026年2月1日 9,861人 白馬村
白馬村の人口 2026年9月1日 8,167人 白馬村

おもしろかったのは白馬村の人口だ。村の月ごとの統計では、2月1日が9,861人、9月1日が8,167人。外国籍の人も含めた数字で、冬と夏で1,700人ほど違う。スキーシーズンだけ住む人がそれだけいる、ということだと思う。

年の半分だけ住むという夫婦の暮らし方は、この村ではそれほど珍しくないのかもしれない。冬に人が増える村なら、半年だけの住人も受け入れやすい気がする。

みなさんなら、410万円で雪国の古い家を買ってみたいと思いますか?

参考にした記事・資料


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