「マンホールの蓋が、ぽこぽこ浮いてる」。千葉県佐倉市で撮られた映像がまわってきました。蓋が持ち上がって、ゆらゆら揺れています。速報のテロップは「踊るマンホールの蓋」。言い得てはいるけど、見ていてちょっと不気味です。
同じ21日、横浜市中区からも映像が入っていました。今度は排水溝から水が噴き上がっています。手前に2つ、道路の向こうにも1つ。でも、これって雨が上から降ってたまった水じゃないんですよね。下から来ています。名前のある現象らしいので、調べてみました。
まず事実確認
21日、台風25号が関東に最接近しました。気象庁は午後0時40分、東京都伊豆諸島の大島町に「レベル5土砂災害特別警報」を発表しています。大島町の雨量は午後1時すぎで550ミリ超。平年9月のひと月分の1.5倍以上です。
横浜市は午後1時半現在で、377カ所・8万4121世帯・17万2834人に避難指示を出しました。保土ケ谷・港北・戸塚・鶴見の計5カ所で崖崩れ。青葉区では木が倒れて住宅に被害が出ています。けが人の情報はないそうです。

横須賀市では土砂崩れで、64歳の女性が生き埋めになったとの情報が入りました。一緒に住んでいる男性の通報で分かったということです。午後3時21分には東京都に記録的短時間大雨情報。御蔵島村付近で1時間に約110ミリ。空の便は午後3時現在で、全日空140便、日本航空135便が欠航。成田も105便です。あわせて4万人以上に影響が出る見通しだと伝えられました。
反応:「踊るマンホール」と呼ばれた
佐倉市の映像も、横浜市中区の映像も、どちらも投稿されたものです。中継ではこう伝えていました。「排水溝から水が激しく吹き上がっています。手前に2つ、道路の向こうからも1つ。見える範囲で3つ」。
気象庁は午後1時ごろ、神奈川県に線状降水帯の直前予測を出しています。3時間以内に発生して、土砂災害や氾濫で周囲の状況が一変し、避難が困難になるおそれがある、と。
正直に言うと、私はこの映像を「冠水した道路」だと思って見ていました。雨がたまってああなった、と。でも順番が逆でした。道に水がたまる前に、下水の側がもう満杯になっているんです。
背景:東京の下水は「時間70ミリ」まで
元気象庁長官の山本孝二さんが、数字で説明していました。都市部の排水は、東京で1時間70ミリ程度、千葉などで1時間50ミリ程度の雨に対応する設計が一般的なのだそうです。
ところが線状降水帯ができると、1時間に80〜100ミリが降ります。設計の値をあっさり超えます。そうなると水は行き場をなくして、下水道から「噴水のように」上がってくる。マンホールが踊るのは、その圧が蓋を押し上げているから、ということみたいです。これを内水氾濫というそうです。
山本さんは、災害発生の目安として「総雨量(または24時間雨量)300ミリ」という数字も挙げていました。今回は関東全域で300ミリを超える可能性がある、と。
気象予報士の宇野日和さんは、8月の千葉豪雨と比べていました。あのときは千葉市で24時間に367ミリ。茂原市や佐倉市は総雨量こそ200ミリ台でしたが、1時間100ミリ超が短い時間に集中しました。今回は降り方が違うそうです。広い範囲で24時間雨量が200〜300ミリ近くに達していて、総雨量が積み重なる形になっている。だから危ない地域が広い、という話でした。
雨はまだ増えます。22日朝までに予想される雨量は関東で300ミリ。千葉県内では総雨量が500ミリを超えるおそれもあるとのことでした。平年9月のひと月分の2倍近くが、数日で降る計算になります。
専門家・公式:で、どうすればいいのか
山本さんが挙げていたのは、まず止水板と土のうです。土のうが用意できないなら、水を入れたビニール袋でもいい。玄関の前に置いて、入ってくる水を止める。
それから半地下の駐車場。地面より低いところは水がたまりやすくて、極めて危険だと言っていました。水が入る前に車を高台へ動かしておく。ただ、すでに浸水が始まっているなら無理に外へ出ない。車庫のような低い空間には絶対に入らない、とも。

避難のタイミングは「レベル3で準備、レベル4で決断・実行」。レベル5が出ている地域や、外へ出るほうが危ない場合は、崖と反対側の部屋、2階以上、近くのコンクリートの建物へ。
車についてはNHK生活・防災が数字を出していました。「30センチ程度でエンジンが停止し、50センチ以上では車が浮いて流される危険があります」。浅くても、川からあふれた水で勢いがあれば簡単に流される、とも書いてありました。ひざの高さでもう無理、と覚えておくといい気がします。
水が引いたあとの話も書いておきます。同じ日に、水害のあとにかかるお金を追った放送がありました。8月13日の千葉豪雨から1カ月たった家を取材したものです。
床上30センチの浸水だった男性(71)は、冷蔵庫や洗濯機を買い直していました。家具と家電だけで150万円ぐらい。自宅は「半壊」判定で、最大75万7000円の支援と、災害見舞金3万円が受け取れるそうです。
問題は保険でした。加入していた保険のパンフレットには「風水雪害」「最高600万円」と書いてあったといいます。でも、その額が出るのは家が全壊するか流された場合。30センチの床上浸水では、支払われるのは見舞金の60万円だけでした。
床上1センチでも、床下が満水になると大ごとです。水と泥を取り除いて、除湿機と送風機を数週間あてて、濡れた断熱材を撤去。また数週間乾かして、清掃と消毒、新しい断熱材、シロアリ対策。復旧業者に頼んだ40代の男性は130万円ほどかかったと話していました。床上2メートル26センチまで浸かった家では、リフォーム業者が「下手すれば1000万円を超える」と。
「水が引いたら終わり」ではないんですよね。乾かす時間まで含めると、数カ月の話になるみたいです。ちゃんと乾かさないと家の強度が落ちる、という説明もありました。
今日いちばん覚えておこうと思ったのは、東京で時間70ミリ、千葉などで時間50ミリという数字でした。あの設計値を超えた瞬間に、水は下から来る。マンホールが踊っていたら、それはもう「これから危ない」ではなくて「もう超えている」の合図らしいです。みなさんの家の火災保険、水害がどこまで出るか、見たことありますか?
参考にしたところ
- ABEMA NEWS「横浜市中区で排水溝3か所から水が激しく吹き上がる映像が投稿される」(2026.9.21)
- ABEMA NEWS「元気象庁長官『下水道から噴水のように逆流』『いつ何が起きてもおかしくない』」(2026.9.21)
- 神奈川新聞「台風25号が接近、横浜市全域に土砂災害危険警報で17万人超に避難指示」(2026.9.21)
- オリコンニュース「NHK、道路冠水で注意喚起『50センチ以上では車が浮いて流される』」(2026.9.21)
- FNN「床上浸水で復旧費用1000万円 “被害なし”マンションでも20万円」(2026.9.21)
- 気象庁 防災情報(特別警報・記録的短時間大雨情報・線状降水帯)
- 素材:Xに投稿され、各局が「視聴者提供」として伝えた映像(千葉県佐倉市のマンホール、横浜市中区の排水溝)。写真はウィキメディア・コモンズの資料写真と、文面を書き起こしたカードです(放送・記事の画像は載せていません)。