フラフープで車が盗まれていた 全国初の摘発、手口が思ったより単純だった

フラフープで車が盗まれていた 全国初の摘発、手口が思ったより単純だった

フラフープで車が盗まれる、と言われてもピンとこない。

でも埼玉県警が公開した押収品の写真を見ると、たしかにフラフープだった。しかもこの手口での検挙は全国で初めてらしい。

フラフープ(資料写真)
フラフープ(資料写真)

何があったのか

埼玉県警は9月9日までに、住所不定で無職の宿原仁壱容疑者(26)と斎藤真良知容疑者(28)を窃盗の疑いで再逮捕した。

産経新聞によると、再逮捕の容疑は、2月28日から3月1日にさいたま市内の住宅の敷地から乗用車1台(100万円相当)を、3月1日に伊奈町のアパートの駐車場から乗用車1台(150万円相当)を盗んだなどの疑いだ。

手口は「リレーアタック」と呼ばれるもの。ここ数年で増えている自動車盗の方法だ。

駐車場(イメージ)
駐車場(イメージ)

リレーアタックって何

今の車の多くは、スマートキーを持って近づくだけでドアが開く。キーと車が微弱な電波でやりとりしているからだ。

この電波、実は家の中まで届いている。玄関の靴箱の上や、リビングのテーブルに置いたキーからも、わずかに漏れ出ている。

リレーアタックはそこを狙う。

  1. 1人が家の壁ぎわに立って、中にあるキーの電波を拾う
  2. それを増幅して、もう1人が持つ機器に飛ばす
  3. 車のそばにいるその人の機器が、キーのふりをして電波を出す
  4. 車は「キーが近くにある」と勘違いしてドアを開ける
日本のパトカー(イメージ)
日本のパトカー(イメージ)

鍵を壊さないし、窓も割らない。ドアが普通に開いて、そのまま走り去られる。朝起きたら車がない、という被害の多くがこれだ。

で、フラフープはどこで使うのか

ここが今回の新しいところ。

キーから漏れる電波はとても弱い。家の奥に置いてあると届かないこともある。だから犯人側は、できるだけ大きなアンテナで拾いたい。

車のドアとキー(イメージ)
車のドアとキー(イメージ)

そこでフラフープにコードを巻きつけて、大きな輪っかのアンテナ(ループアンテナ)にしたらしい。輪が大きいほど弱い電波を拾いやすくなる。

産経新聞の記事では、微弱な電波を受信する「アンテナコード」をフラフープに取り付けていた、とある。押収品の写真は、正直かなり手作り感があった。

県警によると、リレーアタックでフラフープを使った自動車盗の検挙は全国初だという。

車のキー(資料写真)
車のキー(資料写真)

2人は数十件に関わった疑い

警察は、2人が埼玉・千葉・茨城で数十件の自動車窃盗に関わったとみて余罪を調べている。

再逮捕の容疑になった2台だけで、合わせて250万円相当。数十件となると、被害はかなりの額になりそうだ。

ハンドルロックをつけた車(資料写真)
ハンドルロックをつけた車(資料写真)

防ぐ方法はある

怖い話だけど、対策はけっこう単純だ。要するにキーの電波を外に漏らさなければいい。

  • 電波遮断ポーチ(キーケース)に入れる — いちばん確実
  • 缶に入れる — クッキーの缶でもいい。金属が電波を止める
  • 玄関に置かない — 家の中央や2階など、外壁から遠いところへ
  • 節電モードを使う — 車種によってはキー側で電波を止められる。取扱説明書に載っている
警察車両(イメージ)
警察車両(イメージ)

あと物理的な対策もある。ハンドルロックやタイヤロックは、リレーアタックでドアが開いても走り出せなくする。見えるところに付いていると、そもそも狙われにくい。

警察庁の統計で確かめてみた

自動車盗がどれくらい起きているのか、警察庁の「自動車盗難等の発生状況等について」(2026年2月)を見てみた。2025年の自動車盗は6,386件。いちばん多かった2003年の64,223件とくらべると、1割以下まで減っている。

ただ、ここ数年はまた増えている。2022年5,734件、2023年5,762件、2024年6,080件、2025年6,386件。4年続けて増えた。

警察庁「自動車盗難等の発生状況等について」(2026年2月)と日本損害保険協会「第27回自動車盗難事故実態調査」をもとに作成
項目 数字 出典
2025年の自動車盗 6,386件(前年6,080件) 警察庁
いちばん多かった年 64,223件(2003年) 警察庁
キーなしで盗まれた割合 77.8%(過去最高) 警察庁
埼玉県の件数 756件(全国2位。1位は愛知の1,051件) 警察庁
盗まれた車種の1位 ランドクルーザー 1,177台 警察庁
保険金が支払われた盗難 2,746件・約82億円(2025年) 日本損害保険協会

気になったのは「キーなし」の割合。キーを車に残していないのに盗まれたケースが、2025年は77.8%で過去最高だった。リレーアタックのような道具を使う手口が、もう普通になっているんだと思う。

都道府県別だと、愛知1,051件、埼玉756件、神奈川649件、茨城540件、千葉539件。この上位5県で全体の55.4%を占める。今回の2人が動いたとみられる埼玉・茨城・千葉は、全部ここに入っている。

日本損害保険協会の調査(2026年3月)でも、2025年に保険金が支払われた車の盗難は2,746件で、直近5年で最多だった。支払った保険金は約82億円。車種別ではランドクルーザーが5年連続でワーストだ。警察庁の統計でも、2025年に盗まれた車でいちばん多かったのはランドクルーザーの1,177台だった。

警察庁の資料には、対策として「スマートキーは玄関先に置かず、電波を遮断できるケースに入れる」と書かれている。この記事で書いた対策と同じだった。

思ったこと

スマートキーは便利だ。荷物を持ったままドアが開くのは、一度慣れると戻れない。

ただその便利さは「電波が常に出ている」ことで成り立っている。出ているものは、拾える。

フラフープが使われたと聞くと笑ってしまうけど、要は「大きい輪っかならよく拾える」という物理の話で、そこに特別な技術はいらないということでもある。

みなさんは車の鍵、どこに置いていますか。玄関だという方は、今日だけでも場所を変えてみてもいいかもしれません。

参考にした記事・資料


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