名古屋で1時間104.5ミリ 観測史上最大の雨、198万人に避難指示

名古屋で1時間104.5ミリ 観測史上最大の雨、198万人に避難指示

帰宅の時間帯でした。栄の大通りが、足首まで水に浸かっていた。

8日午後、愛知県西部と岐阜県美濃地方で線状降水帯が発生しました。気象庁が発表したのは午後4時28分。そこから名古屋の街が一気に変わります。

大雨で水かさが増した水路(資料写真)
大雨で水かさが増した水路(資料写真)

1時間に104.5ミリ、観測史上最大

名古屋では午後4時53分までの1時間に104.5ミリを観測しました。

この数字がどれくらいかというと、2000年9月の東海豪雨のときが97.0ミリ。あのときの記録を上回って、観測史上いちばん多い雨になりました。

26年間破られなかった数字が、1時間で塗り替えられた。

名古屋市や瀬戸市、春日井市、小牧市などには「レベル4」の大雨危険警報。栄地区では広小路久屋東交差点や矢場町交差点、国道153号の広小路葵交差点などが冠水しました。

名古屋・栄の街並み(資料写真)
名古屋・栄の街並み(資料写真)

100万世帯、198万人

名古屋市は、川の水位が上がって氾濫の危険が高まったとして「緊急安全確保」を発表します。避難情報のなかでいちばん高いレベルのものです。

中村区や中川区、港区など8つの区では、全部の学区が対象に入りました。午後6時10分の時点で、100万世帯・198万人に避難指示などが出されています。

数字だけ見ると規模が大きすぎてぴんと来ないかもしれません。名古屋市の人口は9月1日時点でおよそ235万人なので、198万人はその8割を超えます。市のほとんどが対象になったと考えていいと思います。

名古屋・栄の久屋大通公園(資料写真)
名古屋・栄の久屋大通公園(資料写真)

地下鉄が全線止まった

交通への影響もかなりのものでした。

名古屋市営地下鉄は全線で運転を見合わせ。市バスも止まりました。東海道新幹線も一時ストップしています。

鶴舞線のいりなか駅では、ホームにいた人が駅員の指示で地上へ避難したと報じられています。地下にいるほうが危ないという判断だったのでしょう。

名古屋市営地下鉄のホーム
名古屋市営地下鉄のホーム(資料写真)

名古屋は地下街と地下鉄で街がつながっている場所です。地上の水が地下に流れ込むかもしれない、というのはかなり重い話だと思います。

帰宅の時間と重なった

朝日新聞によると、午後4時40分ごろの栄3丁目では、人の足首ぐらいの高さまで水がたまっていました。

同じころ、NHKは名古屋と岐阜を流れる庄内川に「レベル5 氾濫特別警報」が出たと伝えています。

ちょうど帰宅時間と重なったのが、いちばんきつかったところだと思います。傘を持っていても意味がない降り方で、そのうえ電車もバスも止まっている。

名古屋・栄の商店が並ぶ通り
名古屋・栄の商店が並ぶ通り(資料写真)

線状降水帯とは何なのか

ニュースでよく聞く言葉になりましたが、あらためて整理しておきます。

発達した積乱雲が次々と発生して、それが列をつくって同じ場所を通過しつづける。結果として細長い形の激しい雨の帯ができる。これが線状降水帯です。

やっかいなのは、雲が動いても次の雲がすぐ後ろから来るので、雨が止まないところ。ふつうの通り雨なら数十分でやみますが、この形になると数時間降りつづけることがあります。

今回も、気象庁の発表が午後4時28分で、名古屋の1時間104.5ミリを観測したのが午後4時53分。発表から25分後には記録的な雨になっていた計算です。

発表を見てから支度を始めても間に合わない、というのがこの現象のこわいところだと思います。

避難情報のレベルを覚えておく

今回いくつかの言葉が並んだので、整理しておきます。

警戒レベル4が避難指示。危険な場所から全員が離れる段階です。

警戒レベル5が今回名古屋市が出した「緊急安全確保」。これはもう避難所へ移動する時間もない、命を守るために今いる場所でできる最善の行動を取ってください、という意味になります。

建物の2階以上に上がる、崖から離れた部屋に移る。そういう行動を指します。レベル5が出てから避難を始めるのでは遅いので、レベル4の時点で動くのが本来の想定です。

線状降水帯は、同じ場所に雨雲が次々と流れ込んで居座る現象です。予測はかなり難しいとされていて、今回も発表から冠水までがほとんど間を置かずでした。

「レベル4」が出たら、その時点で動くしかない。今回のようにわずか1時間で街が変わることが、実際にあるということなんだと思います。

気象庁の記録で確かめてみた

104.5ミリが本当に「観測史上最大」なのか、気象庁の歴代ランキングを見てみました。名古屋の統計は1890年から続いています。

1時間の雨の量で1位は、2026年9月8日の104.5ミリ。2位が東海豪雨の2000年9月11日で97.0ミリ、3位は1919年7月18日の92.0ミリでした。130年以上の記録で、100ミリを超えたのは今回が初めてです。

気象庁「歴代全国ランキング(名古屋)」と名古屋市の発表をもとに作成
項目 数字 出典
1時間降水量 2026年9月8日 104.5ミリ(歴代1位) 気象庁
1時間降水量 2000年9月11日(東海豪雨) 97.0ミリ(2位) 気象庁
1時間降水量 1919年7月18日 92.0ミリ(3位) 気象庁
日降水量 2026年9月8日 219.5ミリ(3位) 気象庁
日降水量 2000年9月11日 428.0ミリ(1位) 気象庁
避難情報の対象人数 1,986,708人(市の人口の約84%) 名古屋市

ただ、1日の雨の量で見ると話が少し変わります。9月8日は219.5ミリで歴代3位。東海豪雨の日は428.0ミリで、今回の2倍近く降っていました。

庄内川と新川のあいだの中州(資料写真)
庄内川と新川のあいだの中州(資料写真)

つまり今回は、短い時間に一気に降った雨でした。東海豪雨は一晩じゅう降り続いた雨です。同じ名古屋の大雨でも、性格はだいぶ違うと思います。

名古屋市の発表では、避難情報の内訳は緊急安全確保が1,172,102人、避難指示が814,606人。合わせて1,014,243世帯・1,986,708人です。ウェザーニュースによると、岐阜県の多治見でも1時間に93.0ミリが観測されていました。

追記(10/2)

名古屋市が10月1日に更新した被害状況では、けが人は軽傷35人(9月16日時点)。亡くなった人や行方不明の人はいませんでした。

家の被害は、半壊160件、一部損壊12件、床上浸水131件、床下浸水169件で、合わせて472件です(9月30日時点)。

避難所に来た人は3,547人。8日の午後10時25分に緊急安全確保は避難指示に切り替わり、9日の午前2時45分に解除されました。避難所は10日までにすべて閉じています。

短い時間の雨でここまで広がるのか、というのが正直な感想です。名古屋のみなさん、あの日はどうやって帰りましたか?

参考にした記事・資料


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